「素直で誠実な建築 B.house in 島崎」

2009 九州建築選

西 山 英 夫

 この家に佇んでいると、ただお月様や風景を眺めているだけで満たされた気分になる。建主はそう話してくれました。

 アメリカ出身のBさんは、ウエストコートのケーススタディハウスやオーストラリアの
住宅などに関心を持つ、とても建築好きの方でした。彼らとのおよそ15ヵ月に及ぶ設計と
工事の期間は、建築好きのBさんが色々な洋書やイメージを我々に提示し、またそれに
答えるかたちで試行錯誤し、私たちも思いのほか楽しい日々だったように思います。
 敷地は、熊本市内の西側、その昔宮本武蔵が五輪書を書いた金峰山麓に当り、70万
都市の環境とは思えない程の自然と景色豊かな場所で、眼下に市街地の夜景や九州山地
までが見渡せます。
 計画の与条件としては、景観の保全から30%の建蔽率やがけ条例等の法的制約と、
約2000万円程という少ない予算が大きな課題でした。また具体的な施主のリクエスト
としては、素晴らしい環境を活かした内外の接点を持つ住まい、そして木造を主体と
した軽快で伸びやかな生活空間という明確なものでした。
 特に厳しい予算という前提の上にまとめ上げた建築は、「ごく当り前の造り方で、
要望や建築の構成要素をできるだけていねいに紡ぐ」というとても素直なものです。
合板、モルタル、集成材等、ローコストでカジュアルな素材を素直に活かす。ごく単純な
在来工法に基づいた明快でシンプルな平面や架構を造るといった建築の在り方です。
 大胆な表現や構法等に凝りはしないけれど素直で、誠実な建築。
彼らにとっての解答は、今の時代の要請にも適うひとつの住まいの方向性のようにも
感じられます。